「自己破産」によって生活はどうなる?リスクやデメリットを詳しく解説

深澤 諭史

監修者
弁護士/スタイル・エッジ社外取締役深澤 諭史

「生活費が足りない」「病気になってしまった」「事業が傾いて…」「つい魔がさした」など、借金をする理由は人によってさまざまです。

中には、借金を繰り返してしまい、気づけばとんでもない金額になっていたという人もいるでしょう。

そのような人にとって、すべての借金の支払いが免除される自己破産は、救済措置といえます。

とはいえ、「自己破産をするともう元の生活に戻れないの?」といったように思われている方もいるかも知れません。

支払い免除という効果の大きさから、一定のリスクを伴うことも事実ですが、法的に認められた手続きなので、生活が破綻するようなものではありません。

債務整理の1つである自己破産について、解説していきましょう。

自己破産とは?

自己破産とは、借金を返せない状態の人が一定の財産を債権者に提供することで、すべての借金を免除してもらう正当な法的手続です。

裁判所に申し立てて行う手続きで、司法統計によると、2020年には7万8104件の自己破産が国内の裁判所で扱われたそうです。

「一定の財産を提供する」と説明したように、何も支払わなくていいわけではありません。

手続きすることによって、家や車など、一定以上の価値のあるものを失う可能性があることを覚えておきましょう。

ただし、自己破産はあくまでも生活再建を図るための手段です。

破産法第一条に「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」とあるように、生活が立ち行かなくなるほどに財産を没収されることはないのです。

自己破産のメリット・デメリット

自己破産は、すべての借金を免除するという大きなメリットがある一方で、相応のデメリットも存在します。

その両面をしっかり理解したうえで、手続を行うか検討するようにしましょう。

自己破産のメリット3つ

1.すべての借金が帳消しになる

自己破産が裁判所に認められれば、借金が何千万円あったとしても、全額免除になります。

その対象は消費者金融に限らず、クレジットカードの滞納金やリボ払い、住宅ローン、車のローン、知人からの借金なども含まれます。

ただし、税金や一部の損害賠償などの非免責債権は免除されないので、注意しましょう。

2.生活保護受給者や無職者でも申し立てが可能

自己破産はあくまでも生活再生の機会を設けるための手続きなので、職業や収入によって利用を制限されることはありません。

借金を法的に減額する手続きである債務整理は、他にも「任意整理」「個人再生」などがありますが、いずれも安定した収入が条件になります。

無収入や収入の少ない方が唯一利用できる債務整理の方法といえます。

3.強制執行による差し押さえをストップできる

自己破産の申立てを行い、裁判所から破産手続の開始決定の通知が出ると、金融機関などの債権者は財産や給与の差し押さえができなくなります。

しつこい取り立てもなくなるため、精神的な負担を軽くできるというメリットもあります。

すでに給与などを差し押さえられている場合でも手続きはできますし、申し立てた後は再び給与を全額受け取ることができます。

自己破産のデメリット5つ

1.一部の資産や財産を失う

自己破産は借金をゼロにするだけでなく、破産者の財産を精算して債権者(貸金業者など借入先)に平等に分配するという目的もある制度です。

そのため、

  • 99万円を超える現金
  • 不動産(家、土地など)
  • 売却・換価して1点あたり20万円を超える財産(車、預貯金、生命保険、宝石など)

  • は没収される可能性があります。

    ただし、一部の財産は没収を免れます。

    自己破産の申し立てをした方が自由に利用・処分できる財産という意味の「自由財産」です。

    自由財産には下記のものが挙げられます。

  • 破産手続き後に新たに取得した財産
  • 家電や家具など生活必需品の差押禁止財産
  • 99万円以下の現金
  • 2.保証人や連帯保証人に返済義務が移る

    自己破産の効果は、申し立てを行った破産者自身に限られるため、借金の支払い義務が保証人や連帯保証人に移ってしまいます。

    もし、保証人や連帯保証人がいる状態で自己破産を行うのであれば、あらかじめ経緯を伝えて謝罪するなど、誠実な対応が求められるでしょう。

    3.官報に破産情報が掲載される

    自己破産の情報は、国が発行している広報誌・官報に掲載されます。

    氏名や住所も公になってしまいますが、一般的に官報を見ている人は金融業者や信用情報機関、市区町村の税担当者などごく一部

    友人や会社が見ている可能性は低いといえます。

    4.手続き期間中は一部の職業や資格が制限される

    自己破産の手続きをしている間は、就けない職業があります。

    自己破産手続き中に就業できない職業
    証券会社外務員、旅行業者、宅地建物取引業者、建設業者、生命保険募集人、有価証券投資顧問業者、警備業者、風俗営業、質屋など

    また、弁護士や司法書士、公認会計士、税理士など登録制の職業は、資格そのものを失うわけではありませんが登録を削除されます。手続完了後は、登録ができるようになります。

    5.信用情報機関に事故記録が残る

    自己破産を行うと、信用情報に事故情報が登録されます。

    いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。

    破産手続開始決定日から5~10年間登録されます。

    金融機関は信用情報機関に問い合わせて融資の可否を決めるため、事故情報が登録されている間は住宅ローンやクレジットカードの利用ができなくなります

    自己破産が及ぼす
    生活への影響

    自己破産

    借金をゼロにするという効力がある以上、破産手続が完了した後の生活にもペナルティがあると思っている人は多いのではないでしょうか?

    しかし、自己破産は生活困窮者の救済措置であり、生活再生を図る術です。

    そのため、破産者の権利や自由を奪い、将来を脅かすようなものではありません。よくある疑問や不安を解消していきましょう。

    クレジットカードの利用やローンの契約ができない?

    自己破産の手続開始決定日から、約5~10年はブラックリストに載るため、その間は新たなローンの借入やクレジットカード、キャッシングの利用ができなくなると考えましょう。

    車や高価な家電製品を購入する場合、現金での一括払いであれば問題ありません。

    また、デビットカードやクレジットカードの家族カードであれば、利用できることがあります。

    その他にも、

  • 奨学金などの保証人になるとき
  • 賃貸契約(保証会社が審判会社の場合)
  • 携帯電話・スマートフォン本体の分割払い

  • などで、影響が出る場合があるので、利用する予定があれば注意しましょう。

    家族や同僚・友人に知られる可能性は?

    自己破産をしたことが周囲にバレることはほとんどない、といっていいでしょう。

    官報には自己破産の情報が掲載されるものの、それ以外の場で公表されることはないからです。

    手続を依頼した弁護士にも守秘義務があるため、情報が外部に漏れることもありません。

    ただ、一緒に暮らしている家族がいる場合は影響が出るおそれがあるので、次の章で詳しく解説します。

    家族への影響は?

    一定期間クレジットカードが使えない、一部の職業に就けないといったデメリットは破産者個人に適用されます。

    ですので、家族に直接的な影響が出ることはありません

    ただし、自己破産によって家や車を没収される場合、一緒に住んだり車を共有したりする家族がいたら、迷惑をかける可能性があります。

    また、家族が保証人や連帯保証人になっていると、借金の支払い義務が家族に移るため、さらなる迷惑をかけてしまうといえるでしょう。

    自己破産後に得た収入や財産は?

    自己破産の手続をして借金の全額免除が認められれば、返済義務そのものがなくなります。

    そのため、手続完了後に債権者から催促されるということはありません。

    つまり、破産手続を完了した後に得た家や車といった財産や、働いて得た給与などが没収されることはないのです。

    ただし、手続き後に新たに借りたお金に関しては、きちんと返済しなければいけないので、勘違いしないようにしましょう。

    仕事や会社への影響は?

    自己破産をしたということが、勤めている会社に通知されることはありません。

    税担当などの特殊な職種でない限り、自己破産情報が載った官報を読むこともないと考えられるので、自己破産したことを同僚に知られる可能性は低いでしょう。

    また、会社は自己破産を理由に従業員を解雇することを禁止されているので、職を失うこともないといえます。

    ただ、会社に借金をしている場合は、会社も債権者の1つになるため、裁判所から自己破産の通知が届くことで、発覚する可能性があります。

    選挙権が失われる?

    自己破産によって、選挙権が失われることはありません。

    選挙権は、満18歳以上の日本国民全員に認められた権利なので、職業や収入、自己破産の有無で制限されるものではないのです。

    戸籍に自己破産したことが記載される?

    自己破産をすると、一定期間ブラックリストには載りますが、戸籍や住民票に記載されることはありません。

    海外旅行に行けなくなる?

    自己破産をしたからといって、海外渡航を規制されることはありません。手続きが完了していれば、パスポートも通常通りに発行できます。

    ただし、破産手続中は長期間にわたって居住地を離れることを制限されるため、海外旅行についても制限される可能性があります。 手続きが終わってから、旅行の計画を立てましょう。

    自己破産の条件

    自己破産は、裁判所に認められなければ、借金免除とはなりません。

    そうはいっても、日本弁護士連合会、消費者問題対策委員会が共同で行った調査によると、95%以上の申立てが認められています。

    では、どのような場合に認可されないのか、解説していきましょう。

    借金が払えない状態である(支払不能状態)

    自己破産は、どうしても借金を返済できない生活困窮者を救済するための制度です。

    そのため、客観的に見て支払いができない状態であるとみなされる必要があります。

    支払不能か判断する基準として、下記のようなことが考えられます。

  • 財産、信用、労力などを総合的に見て支払い能力がないこと
  • 返済期限に間に合わせるだけの弁済能力がないこと
  • 返済不能が客観的、継続的であること
  • また、一般的に借金総額が年収の3分の1を超えていると、自己破産が認められやすくなるといわれています。

    免責不許可事由にあたる

    免責不許可事由とは、正当ではない理由で借金を抱えたために、破産をしても債務の免除が認められないケースのことです。

    下記のような理由や状況だと、免責不許可自由にあたると判断されることがあります。

  • 財産を隠匿した、財産を勝手に他人に贈与した
  • 詐欺的行為をした
  • 浪費やギャンブルが原因で借金が膨らんだ
  • 以前に自己破産を認められてから7年以内
  • 自己破産は裁判官の裁量によるところも大きいため、上記のケースに当てはまったとしても、しっかりと反省の意を示すことができれば認められる可能性が十分あります。

    非免責債権にあたる

    自己破産をしたとしても、免除の対象にならない非免責債権というものがあります。

    下記のものが非免責債権にあたります。

  • 税金、社会保険料(健康保険料、介護保険料、年金保険料)
  • 婚姻費用、養育費、慰謝料
  • 給料
  • 破産申立ての際に故意に記載しなかった借金
  • 交通事故の損害賠償金の一部
  • 罰金
  • 非免責債権にあたるお金に関しては、自己破産が認められたとしても免除されず、引き続き支払う義務が生じます。

    自己破産にかかる期間や費用

    自己破産は、申し立てを行ったらすぐに裁判所から認可が下りるというわけではありません。

    書類の準備や裁判所での質疑応答などを行うため、ある程度の時間がかかりますし、手続きのための費用も発生します。

    手続きの内容によって期間や費用は変わってくるので、パターンによる変化を紹介します。

    自己破産の流れ

    自己破産の流れ

    まずは、手続きの流れを解説しましょう。

    自己破産を行う場合、弁護士に依頼して代理人になってもらい、裁判所に「自己破産申立書」を提出します。

    裁判所での質疑応答や財産の処分などが行われ、最終的に裁判官が残った借金の免除の可否を決定します。

    財産の有無によって手続きが異なるので、その違いも知っておきましょう。

    ・同時廃止事件
    破産者が財産を所有していないことが明らかな場合に行われる手続き。 破産手続きの開始と同時に手続きを終了(廃止)するという意味で、期間を短く、費用を低く抑えることができます。

    ・管財事件
    破産者が財産を所有している場合に行われる手続き。また免責不許可事由について調査が必要なケースでも適用される場合があります。
    裁判所が選任した破産管財人が財産を管理、処分、換金して、債権者に配当します。調査期間なども有するため、期間が長くなり、費用も高く多くなりやすいといえます。

    自己破産にかかる期間

    自己破産にかかるトータルの期間は、一般的に6ヶ月~1年程度です。

    弁護士に依頼してから破産申立てを行うまでで、2~3ヶ月程度かかります。

    破産者の収入や借金に関する調査や、申し立てに必要な書類の準備を行う期間が必要だからです。

    申し立てをしてからは、手続きによって期間が異なります。

    同時廃止事件であれば、2週間~1ヶ月程度で終わるケースが多いです。

    一方、管財事件では財産の処分や換金、債権者への配当などの作業が発生するため、4~6ヶ月程度かかってしまいます。

    自己破産にかかる費用

    自己破産にかかる費用は、トータル50万円以上が相場といわれています。

    主に発生する費用は、弁護士費用と裁判所費用です。具体的にどの程度かかるか、見ていきましょう。

    ●弁護士費用の相場

    相談料 1万円程度(1時間につき/無料の場合もある)
    着手金 30万円程度~
    報酬金 20万円程度~

    弁護士費用に関しては、分割払いが可能です。月々の支払額などは、弁護士と相談しましょう。

    ●裁判所費用の相場

    予納金(官報掲載料) 1万5,499円
    (管財事件の場合:20万円~/破産管財人報酬も含む)
    収入印紙(申立手数料) 1,500円
    郵便切手(通知呼出料等) 4,202円(債権者を3名とした場合)

    ※ほか、債権者に送る封筒代などの諸経費も必要になります。

    自己破産以外にも借金の解決法はある

    ここまで解説してきた通り、自己破産は借金の全額免除という大きな効果がある分、相応のデメリットもある制度です。

    多少は借金返済の余地があるという場合は、借金を減らす「任意整理」や「個人再生」という制度も検討しましょう。

    任意整理

    債務者と債権者が話し合いを行い、返済額や返済方法を見直す制度。

    交渉の結果、利息をカットし、元金だけを返済していくというケースが一般的。

    自己破産や個人再生と比べると、借金の減額は大きくないものの、デメリットが少ないのが特徴です。

    原則として財産を没収されることはなく、官報にも載りません。

    保証人に迷惑をかける可能性も低いなど、もっともデメリットが少なく、推定で年間100万人以上が利用している制度です。

    個人再生

    自己破産と同様に裁判所を介して手続を行い、借金を5分の1~10分の1程度に減額する制度。

    住宅資金特別条項によって住宅ローンを減額の対象外とできるため、家を手放さずに借金を減らせるところが特徴です。

    担保がついている場合を除いては、財産も没収されません。

    ただし、手続きは自己破産より複雑になるというデメリットがあります。

    自己破産、任意整理、個人再生に共通したデメリットは、ブラックリストに載ることです。

    どの手続きを行ったとしても、その後5~10年間はクレジットカードやローンの利用が難しくなることを覚えておきましょう。

    自己破産の相談は弁護士へ

    自己破産の手続きは、個人でできないものではありません。

    ただ、書類の作成や裁判所での質疑応答は複雑なので、弁護士に依頼することをおすすめします。主なメリットとして、以下のことが挙げられます。

  • 手続きを任せられる
  • 弁護士に代理人になってもらうことで、重要書類の作成や債権者とのやり取りを一任することができます。書類の誤りや不備を避けられるため、手続きをスムーズに進められるでしょう。

  • 取り立てが止まる
  • 弁護士が代理人になったことを通知された債権者は、催促や請求をストップさせなければいけません。取り立てによるストレスから解消されるでしょう。

  • 周囲に知られる可能性が低くなる
  • 弁護士には守秘義務があるため、自己破産の情報が外部に漏れることはありません。家族や同僚に知られるリスクを軽減できます。

  • 精神的な負担を軽減できる
  • 借金に関する悩みは身近な人には相談しにくいものですが、第三者で守秘義務のある弁護士になら話しやすいでしょう。 債権者とのやり取りも引き受けてもらえるので、精神的にラクになることが期待できます。 自己破産は、借金で立ち行かない人のための救済措置であり、生活を脅かすほどのデメリットはありません。

    借金から逃れ、生活をリスタートさせたい人にとって有効な手段といえます。

    相談無料の弁護士事務所もたくさんあるので、まずは弁護士に相談して、借金の解決方法を探ってみてはいかがでしょうか。

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